2010年03月12日
[パレスチナ自治区] 遊牧民族

エルサレムからイスラエル軍の検問を通り、パレスチナ自治区へ行く。
エリコ(ジェリコ)という町。
この町のことを日本ではあまり知られていないが、ジャズが好きな人は「ジェリコの戦い」というスタンダードナンバーを知っているかもしれない。
当然、宗教的・歴史的な由来が存在しているが、ボクがここを訪れた理由はそれらじゃない。
ただ『最古の町』とされていることと、「海抜マイナス250M」と世界で最も標高の低い町ということに興味を魅かれた。
町はずれのある教会に向かっているとベドウィン(遊牧民族)に会った。
その男はロバに乗っていた。
写真を撮らせてほしいと申し出ると、引き受けてくれる。
しかし、何か浮かばない顔をしていた。
話したのは彼の本心だったのか、日本人のユダヤ人に対する意識を変えたいというPRだったのか。
どちらにしても「助けを求めている」そんな思いが伝わってくるようだった。
言葉はどっと口から溢れる。
俺達はこの地域から出ることを許されていないんだ。遊牧民なのに。仕事も、食べものも、行く場所も、お金もない。まるで飼っている動物と同じじゃないか。生活がきつくて自殺する者だっているんだ。もう殺すなら好きにしてくれ。
他の国へは逃げられない。俺達は「テロリスト」だと危ないことになっているからね。
もしユダヤ人をパレスチナ人が殺すと、そのパレスチナ人の家族は皆殺しになる。子どもも女も。
何が平和だよ!
何をやっているんだ!
アメリカは俺たちを危険だ、危険だと言う。
何をやっているんだ!
ロバに乗っているだけじゃないか!
口から出る不満とともに助けを求める声は彼の表情から出ているようだった。
ボクは思った。
彼の言っていることは事実かもしれない。しかし、その一方でユダヤ人の徴兵された若い兵士の中にもまた死や権力を恐れている者が多くいることだろう。
彼の言葉と表情が一番印象に残った町だった。
Posted by hiyo at 01:11│Comments(0)
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