2010年03月24日
[パレスチナ自治区] 事実

パレスチナ自治区、ジェニンに行く。
「2002年に大虐殺があった」と言われている場所だ。
自爆テロ(自爆攻撃)の出身者はここが多いとされる。
それ故にイスラエルはこの町を攻撃した。
実際にどれだけの人が死んだか定かではない。
パレスチナ側は被害をアピールするために、その数を誇張していることも考えられる。
イスラエル側は「虐殺なんてない。武装している兵士だけを攻撃した」と主張する。
確かなことは、
町は傷ついていたこと。
町は崩壊した建物や銃痕が残っていたこと。
町は再建されているように見えたこと。
それも、
パレスチナ側がイスラエルに罪をきせようとあえて破壊している可能性がないわけではない。
どういうわけか、
イスラエル側は国連調査団の入域を認めなかった。
現地に来ても、何を信じていいのか分からない。
遠い日本にいたなら限られた情報の中でどう判断すればいいのだろう。
確かなことは、
ここで兵士が殺されたこと。
難民キャンプにいた子どもの額に傷が残っていたこと。
2010年03月12日
[パレスチナ自治区] 遊牧民族

エルサレムからイスラエル軍の検問を通り、パレスチナ自治区へ行く。
エリコ(ジェリコ)という町。
この町のことを日本ではあまり知られていないが、ジャズが好きな人は「ジェリコの戦い」というスタンダードナンバーを知っているかもしれない。
当然、宗教的・歴史的な由来が存在しているが、ボクがここを訪れた理由はそれらじゃない。
ただ『最古の町』とされていることと、「海抜マイナス250M」と世界で最も標高の低い町ということに興味を魅かれた。
町はずれのある教会に向かっているとベドウィン(遊牧民族)に会った。
その男はロバに乗っていた。
写真を撮らせてほしいと申し出ると、引き受けてくれる。
しかし、何か浮かばない顔をしていた。
話したのは彼の本心だったのか、日本人のユダヤ人に対する意識を変えたいというPRだったのか。
どちらにしても「助けを求めている」そんな思いが伝わってくるようだった。
言葉はどっと口から溢れる。
俺達はこの地域から出ることを許されていないんだ。遊牧民なのに。仕事も、食べものも、行く場所も、お金もない。まるで飼っている動物と同じじゃないか。生活がきつくて自殺する者だっているんだ。もう殺すなら好きにしてくれ。
他の国へは逃げられない。俺達は「テロリスト」だと危ないことになっているからね。
もしユダヤ人をパレスチナ人が殺すと、そのパレスチナ人の家族は皆殺しになる。子どもも女も。
何が平和だよ!
何をやっているんだ!
アメリカは俺たちを危険だ、危険だと言う。
何をやっているんだ!
ロバに乗っているだけじゃないか!
口から出る不満とともに助けを求める声は彼の表情から出ているようだった。
ボクは思った。
彼の言っていることは事実かもしれない。しかし、その一方でユダヤ人の徴兵された若い兵士の中にもまた死や権力を恐れている者が多くいることだろう。
彼の言葉と表情が一番印象に残った町だった。
2010年02月17日
[パレスチナ自治区] オリーブ畑を越えて

張り詰める空気は緊張そのもの。
それに人の高揚した気分が混じり込む。
オリーブ畑をはるか横切る目に見えない国境線を越えて、
二つのグループは距離を縮めてゆく。
毎週金曜日のデモ。
イスラエルの兵士は言う。
「テロリストになるやつらがいなければ俺達は平和なのに」
パレスチナ住民は言う。
「あいつらが攻めてくるから、俺達に未来はない。行き場もない。あいつらがいなければ・・・」
平和を奪い合って争いが生まれ、憎しみの連鎖がさらにそれを加速させる。
いったい「平和」とは何か。
「自分さえよければいいのは、平和ではない」
もしそう言うのであれば、今の日本はどちらになるだろう。
2010年02月14日
[パレスチナ自治区] 無機質でアートな壁


パレスチナ自治区を歩いた。
壁沿いを歩いた。
(イスラエル政府が自爆テロ防止のためという名目で、パレスチナ自治区を囲っている壁。しかし、実際は停戦ラインをはるかに超えて自治区領域に食い込んでいる。)
そいつは当たり前のように立っていた。
壁の向こう側を覗き込む隙間は99%ないと言っていい。
登り超えることはまずできないだろう。
空の青の下で、そいつはとても無機質に見えた。
冷たいような、絶対的な力の存在のようなものを感じさせる。
こんなもの一体どうやって建てているのか。 ベルリンの壁はこんな感じだったのか。
これに囲まれて、ごく限られたエリアで生活し、外に出れないというのはなんなんだ。
パレスチナ人はこの壁を見るたびに、何らかの感情を押さえ込んでるかもしれない。
ボクはそれを簡単に通り越した。
それがチェックポイントかどうかハッキリしないまま。振り返ったときにそれだと気づいた。
自治区にいる人々は自由に聖地エルサレムに行くことを許されていない。通るにしても、厳重なセキュリティーチェックと許可証が必要となる。
「オレはエルサレムにいけないんだ」
と売店の前で声をかけてきた男が言った。